馬券ネオメソッド(レース回顧編)
ヴィクトリアマイル&京王杯SCの回顧
第14回ヴィクトリアマイル(GⅠ)
1着
ノームコア
2着
プリモシーン
3着
クロコスミア
ラップ:
12.3-10.6-10.8-11.1-11.3-11.2-11.5-11.7
時計:1.30.5
まずはトラックバイアスから。先週より時計は速く、外差し一辺倒というわけではありませんでした。若干、内ラチ沿いが伸びづらかったかという印象はありますが、内外の不利はほとんどないフラットな馬場設定だったと思います。
後方一気が届く馬場ではなく、ある程度先頭を見る位置にいることが重要だったので、どこを通すかというより、どれくらい前についていくかが重要。そんなイメージ。
流れは、前半3F33.7秒から、道中で11秒台前半を刻み続ける前傾~失速ラップ。
まずは、5着アエロリットの頑張りは賞賛に値すると思います。横山典騎手も、馬場の(冒頭で述べた唯一のNGルート)内ラチ沿いを避けて懸命に踏ん張っていました。さすがに疲れてしまいましたが、海外遠征帰りで調整が難しい中、これだけ走れるのは地力の高さでしょう。改めて、良い牝馬だと感じさせられました。
勝ったノームコアは、好位直後のベストポジションをキープ。この流れでも多少行きたがるくらいの行きっぷりの良さには驚きました。これまでベストパフォーマンスだった紫苑Sが、後傾ラップを差し切っての勝利。
そんな馬が、このハイラップで楽に追走するのですから、これが陣営の調整パターン変更の賜物なのか、それとも眠っていた才能が開花したのか、これまでのイメージを一新してみせました。
それにしても、レーン騎手は見事。土曜日の京王杯SCもこのヴィクトリアマイルも、お手本のような位置取りから追ってしっかり馬を伸ばしての勝利。難しいことを簡単にやっているように見せるあたりに豊かな才能を感じます。そして、何よりも、ルメール騎手の騎乗停止によって与えられたビッグチャンスをちゃんとモノにする勝負強さ、これが特筆モノ。
来日してから猛スピードで勝ち鞍を量産しており、この日も明らかな「レーン人気」が起きる状況。こんなに早くファンの評価を獲得した外国人ジョッキーが過去にいたでしょうか? 年明けに来日していたマーフィー騎手ともども、世界にはとんでもない若者がいるものです。
2着プリモシーンは、道中の位置取り的にはノームコアとほぼ同じくらい。ただ、4角で若干ながら離されてしまったところが、最後の差に繋がってしまいました。それでも、高速耐性の強さを改めて証明する好内容2着は立派です。
3着クロコスミアも年齢による衰えなど一切感じさせない競馬。前走が詰まって脚を余した惜しい内容だったので、その時点でマイルへの対応には手応えがあったのでしょう。
血統的な話をすると、勝ったノームコアが母父クロフネ、NHKマイルCの予想コラムでこれでもかと紹介した、春の東京マイルの最重要血統を持った馬でした。やはりこの時期に強い特性がありますね。
また、3着クロコスミアも母父エーピーインディ系ボストンハーバー。過去、このレースでも15年12人気2着ケイアイエレガント、10年8人気2着ヒカルアマランサスと2頭の人気薄が馬券に絡んだエーピーインディ系。久々にレース適性を発揮した格好。
こういった、ダート的馬力血統は、この時期の東京マイルGⅠでは常にマークする必要があると再認識しました。
もうひとつ、ディープ産駒がまたも2着だったことも個人的には注目してます。
これまで、このレースを勝ったディープ産駒は、デビューから1度しかメンバー最速の上がりを使ったことがない先行型ディープのヴィルシーナと、大雨の中で勝ったジュールポレールの2頭だけ。つまり、いわゆるディープらしい、良馬場の決め手比べに強いタイプは取りこぼすことが多い。
今回のプリモシーンは4人気2着。取りこぼしとは言えないかもしれませんが、やはり、良馬場で行われるヴィクトリアマイルにおいては、この手の純正ディープは勝ち切れないケースがあると考えておきたいですね。
第64回京王杯SC(GⅡ)
1着
タワーオブロンドン
2着
リナーテ
3着
ロジクライ
ラップ:
12.3-10.9-11.0-11.3-11.0-11.1-11.8
時計:1.19.4
いかにも1400らしい、極端な淀みのない持続力ラップ。制したのはタワーオブロンドンでした。
スタートからゴールまで、何にも邪魔されることなく、本当にスムーズなレース運び。競馬において、ましてや重賞でここまで減点のない立ち回りが叶うことはほとんどありません。それを叶えさせたレーン騎手の手腕は本当に見事だったと思います。ルメール騎手の騎乗停止により、これから先のGⅠでも有力馬を任されることになりましたが、変なプレッシャーさえ感じなければ馬の力を存分に引き出してくれることでしょう。
そのタワーオブロンドンは、父がレイヴンズパス。08年のブリーダーズCクラシック(米国)、クイーンエリザベスⅡ世ステークス(英国)などを勝っている馬。欧米でGⅠを勝ち、距離もマイルと2000ですから、かなり万能性に優れた馬だったと言えます。
ただ、タワーオブロンドンの場合、母父にダラカニ、さらに母母父にサドラーズウェルズという、超が付くコテコテの欧州母系を持った馬。レイヴンズパスの万能性によって、母系の欧州性が引き出されるのではないか? とも考えていたのですが、この時計の出る硬い馬場でレコード勝ちですからね。そういった心配は全く無用のだったようです。今後の路線選択が難しい気はしますが、もうひとつ上のランクに到達しそうな予感もあります。
2着はリナーテ。内に潜り込んでロスのない上手な立ち回りだったと思いますが、直線で前方の進路が怪しくなったところで追い出しを待たされ、その間に勝ち馬に先を越されてしまっています。ここで脚が溜まったことが最後の伸びに繋がったわけで、スパッと前が開いていれば……というつもりはありませんが、結果だけ見ると勿体無い競馬だったとも。それでも、前走に続き今回も1400でこれだけの脚を使えたことは収穫。兄にサトノダイヤモンドがいる良血馬ですから、これからも目が離せない存在になりました。
3着ロジクライは、相変わらず良い競馬はしているのですが、どうしても決め手負けしてしまうのは、この馬も個性ゆえの宿命のようなものでしょう。レースの流れを考えれば、一番強い競馬をしていたとお思います。
ちなみに、今開催の東京芝で好走馬連発のハーツクライ産駒でした。
期待したエントシャイデンは11着。先週の馬場ならまだしも、この日の馬場であの位置取りからでは苦しいですね。最後は馬群を縫うようによく伸びていて、少し詰まる場面がなければもう少し上の着順もあったでしょう。少し残念。
ただ、今年に関しては、ここ数年の傾向と異なり、欧州性の強いスタミナ型が上位を占めており、結果的にベクトルが逆になってしまっていました。この原因がどこにあるかは現時点で判然としませんが、来年の予想がかなり難しくなりました。
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